続けていく力

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先週末は奈良方面へ、ぶらりと1泊の旅行に出掛けて来ました。

 

奈良から和歌山、吉野・大峰、熊野一帯にかけての歴史的な建物や風情が好きで時々出掛けるのですが、何度訪れてもいいですね。

 

この辺りの温泉の素晴らしさも、何度でも行きたくなる理由でもあります。

 

そんな中、今回の宿泊は吉野郡川上村の山間にある、1軒の歴史あるお宿にお世話になりました。

 

国道169号線沿いにあるお宿ですが、すこし道から逸れた高い場所にあるため、何も知らなければそのまま通り過ぎてしまうかもしれません。

 

こちらは明治14年の創業以来130年以上の歴史があり、建物自体も大正前期に建てられた木造建築で、当時の大正ガラスなどが今でもそのまま使われていたりします。

 

そして大峰山・柏木登山口の目の前に立地し、かつては大峰山の修験者の人々で賑わった行者宿でもあるのです。

 

私が宿泊した当日も、翌日の早朝から大峰山に登頂する4名ほどグループの賑やかな声が他の部屋から聞こえていました。

 

「聞こえていた」というのも、大正造りの昔ながらの建物ですから、各部屋それぞれが廊下や縁側を通して一続きに繋がっているため、他の部屋の大きな声などはそのままに聞こえて来るのですね。

 

廊下と部屋を隔てるのは障子戸1枚だけですので、廊下を人が歩く足音などが障子の向こうから聞こえてくるという、まさに昔のお宿そのままの様子を体験することになります。

 

現代的なホテルや旅館に慣れてしまった感覚では、最初は奇妙に感じられるところもありましたが、いまとなっては逆に珍しい、昔のお宿の風情を感じられる貴重な機会となりました。

 

翌朝、チェックアウトの際に女将さんと色々お話しさせていただいたのですが、私の故郷と少しばかり繋がりがあり、知人もおられるとのこと。

 

何か不思議なご縁ですね。

 

私がお宿についてあれこれ質問したためか、ご厚意で今は使われていない本館の宿泊部屋や、大昔の電話室(交換手に繋いでもらう時代の電話器)などを見させていただき、宿場町として賑わっていた旺時の様子などを聞かせていただきました。

 

お宿の中心として取り仕切っていらしゃったご主人が亡くなられてからは、女将さんと数名のスタッフで運営されているようですが、やはり色々な面で苦労がおありだと思います。

 

「歴史ある建物や旅館をいつまでも残して下さい」と周りが言うのは簡単。

 けれども、実際にそれをするのは並大抵のことではありませんよね。

 

昨晩賑やかだったあの4名のグループが、翌朝、部屋で出掛ける準備をしながら、「いい宿だった」「また来たい」と言っているのが聞こえて来る。

 

このような声を、宿を続けていく力に換えられているのだと思います。

 

女将さんとの話は尽きませんでしたが、僕自身も「いつかまた泊まりに来よう」、そう思いつつ宿を後にしました。